本稿では、Achmea、ASR、Athora、NNの4社について、2025年の国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、IFRS)に基づく年次報告書の比較分析を行っています。2025年はIFRS第9号およびIFRS第17号の適用後、3回目の報告年度となり、各社の財務諸表や主要業績指標の推移を観察しています。本分析では、損害保険セクターにおける動向の変化を明らかにするために、貸借対照表の構成要素、各種業績指標および価値指標について考察しています。
損害保険会社の大きな特徴の一つは、プレミアム・アロケーション・アプローチ(PAA)を広く用いている点にあり、この場合の契約上のサービス・マージン(CSM)は明示的報告ではなく、暗黙的な形で存在します。ミリマンは、100社を超える国際的金融機関の財務結果を収録した社内データベースを構築しており、特に保険事業およびIFRS第17号の下での(再)保険契約の評価に重点を置いています。このデータソースは、本稿で提示する分析の重要な基盤となっており、分析ではこのデータベースを活用して、株主資本、再評価、CSM、リスク調整(RA)といった貸借対照表の構成要素を掘り下げています。これら全体が各社の認識上の企業価値を形成しています。また本稿では、これらの構成要素の動きと、それが将来の財務面の業績に与える影響についても検討し、2025年に見られた変化に焦点を当てています。
主な論点は以下のとおりです。
- 貸借対照表情報:株主資本、再評価、CSM、RAを含む企業価値に関する意味
- IFRS第17号とソルベンシーIIの比較:2種類の貸借対照表における保険負債評価額の差異
- 主要業績指標:コンバインド・レシオ、保険サービス比率(グロスおよびネット)、CSMの伸展、新契約CSM
- 損益計算書の構成要素:保険サービス損益、非帰属費用、運用損益、当期純損益
- 損失要素:期首の損失要素、新契約、不利な契約に係る損失要素の戻入れ、その他の指標
- 再保険:純損益、期末CSM、期末RA、その他の指標
- 価値の観点:将来の見込み利益の蓄積額、包括資本、ならびにソルベンシーII自己資本およびソルベンシー比率